倒叙と私的犯人論

 

お久し振りです。白畑です。

近況報告の更新が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。
せっかくの月に一度あるかないかの担当なので、なにかいろいろ書きたいなと思いながら、

いざPCを立ち上げてみると、なにも頭に浮かばない・・・・・・みたいな状態でして。

この数日間、四苦八苦しておりました。(ごめんよ、神父くん、石神くん)

・・・・・・とまあ、そんなわけで今回も近況報告というよりは単なる雑文の掲載ということになりました。どうかご海容ください。

 

さて、みなさんは倒叙ミステリというジャンルをご存知でしょうか?
簡単に説明すると、倒叙ミステリは通常のミステリとは違い、まず始めに犯人とその犯行が明かされます。

そのため、「誰がどのように犯行を行ったのか?」ではなく、「一見完璧とも思える犯行を探偵や刑事はどのように突き崩していくのか?」を主眼として、読者は(主に犯人の視点で)物語を読み進めていくことになります。

テレビドラマでは「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」、小説では「容疑者Xの献身」や「青の炎」などが有名な倒叙ミステリですね。

(ドストエフスキーの「罪と罰」も広義の倒叙物と言えるかもしれません)

推理小説の数あるジャンルの中でも、ぼくはとりわけこの倒叙ミステリが大好きです。

犯人と探偵役の息詰まる心理戦をはじめ、倒叙には倒叙ならではの魅力がいっぱいあるからです。

 

そんな愛してやまない倒叙に触れるたびに思うことがあります。

それは、推理小説(本格ミステリ)において犯人は影の主人公である、ということです。

司直の手から逃れるために、あるいはもっと純粋に己の願いを叶えるために、死に物狂いで犯罪の計画を立て、人生のすべてを賭して実行に移し、あらん限りの知恵と精神を武器に名探偵と渡り合う――そのような犯人は、謎と知的興奮を核とするミステリにおいて、必要不可欠な存在です。

犯人なくして、名探偵は名探偵たり得ないわけです。
みなさんもミステリをお読みの際は、ぜひともこのことを念頭にお読みください・・・・・・なんてね。

 

最後におすすめの倒叙ミステリをいくつかご紹介します。

 

1.「福家警部補の挨拶」(短編集)/創元推理文庫 作者:大倉崇裕
 丁寧な描写と伏線。なにより安定した面白さ。
 シリーズ第二作の「福家警部補の再訪」から読むのもおすすめです。

 

2.「触法少女」(長編)/徳間文庫 作者:ヒキタクニオ
 少女の計画する緻密な犯罪計画と物語の展開が秀逸です。

 

3.「実験刑事トトリ」(短編集)/リンダブックス 作者:西田征史 ノベライズ:吉田恵里香

 NHKで放映されていた同名のドラマをノベライズしたものです。
 ドラマが大変おもしろかったので、小説版も購入してみました。
 キャラクターがとても魅力的で、ミステリとしての完成度も非常に素晴らしいと思います。

 

4.「完璧な遺書」(短編) 作者:有栖川有栖
 講談社文庫の「英国庭園の謎」に所収されている一編。
 巧妙なトリック、そして犯人の心理描写が見事です。

 

それでは今回はこのへんで。
では!